169人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れ様でした」
まだ残っている先生方に挨拶を済ませて、職員室を出る。
今日こそは、ちゃんと夕飯を食べて、ちゃんとシャワーを浴びて、ちゃんと布団の中で眠ろう。
そう思いながら校舎から出ると下校する生徒達の波に混じりながら、あちこちで飛び交う挨拶に辛うじて笑顔で答える。
そして校門を出た瞬間、目の前に現れた姿に心臓がトクンと波打った。
「キミ……」
ペコリと小さな頭を下げた瞬間、艶やかな黒髪がハラハラと散って白い顔を隠す。
正直、まずは連絡が来ると思っていた僕は、想定外の展開に内心戸惑っていた。
「……もしかして、外でずっと待ってたの?」
「……十分程」
ポツリと言葉を落としながらゆっくりと顔を上げると、小さな鼻が真っ赤になっている。
「寒かっただろ?場所、移動しようか」
「……はい」
素直に頷くと、彼女は僕の後ろを付いてくる。
……一体、この半日で何があったのだろうか。
考えていたら、ふと違うことが頭に過る。
最初のコメントを投稿しよう!