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古い。狭い。暗い。の、三拍子は、当然言うまでもないが学生のウケは悪いようだ。
いつもスーツを着たサラリーマンや、隠居生活を送っている老人の姿しか見たことがない。
__チリリン。
と、扉を開けると軽快なベルの音が鳴り、奥にいた喫茶店のマスターが顔を出す。
白髪の髪に鼻の下には同じ色の髭を生やし、目尻にある皺を深くする。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
挨拶を交わし、一番端のテーブルに僕達は腰を降ろす。店内に流れるクラッシク音楽を耳で受け流しながら、辺りを見渡す。
パラパラと入っているお客さんは、予想通りいつもと同じ年齢層に内心ホッとした。
「ごめんね。あまり人に見られない方がいいと思って、この喫茶店にしたんだけれど」
同じように店内をキョロキョロと見渡していたミツハは、僕の顔を見るとぷっくりとした唇を開く。
「いつもこうやって逢引きしているんですか?」
心底、まだ飲み物を頼んでいなくて良かったと安堵する。ましてや、口に何か含んでいたら確実に彼女の可愛い顔を目掛けて吹き出していたに違いない。
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