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「……逢引きって、古い言葉を知ってるね」
「古いですか?」
キョトンとしている顔を見て、今更ながら当たり前のことを思う。
やはり彼女はカズミとは全くの別人だ。
おっとりとした動作に落ち着いた話し方は、子供っぽくてすぐケタケタと笑うカズミとは正反対だ。
それに背丈も、彼女のほうが少し大きいような気がする。
「……少し古いかな。それに、ここは僕にとっての秘密基地みたいな場所だよ」
「秘密基地?」
「そう。生徒は勿論、関係者と遭遇したこともない。だから、一人きりになりたいとか、そういう時に重宝しているんだ」
「……そうなんですか」
会話が一旦途切れた所で、僕はホットコーヒーをミツハはホットミルクティーをマスターに頼む。
「お悩み相談は、基本学校でしかしないしね。ここは秘密にしておいて」
「……はい。モテる人は大変ですね」
「え、僕? モテないよ?」
「私の学校でも有名みたいですよ」
「え。そうなの?」
自分の知らない所で、どんな噂をされているか心配になる所だが「モテる」と、いう悪意の感じられない表現に少しホッとする。
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