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「友達も、イケメン先生って」
「……そんな。もう三十四歳だよ。キミの年齢から見たら、もうおじさんだよ」
と、苦笑しているとマスターが注文した飲み物を僕達の前に置いて、また奥へと戻っていく。
それを合図に、ブラックのままホットコーヒーを一口飲み込むと、目の前にいる彼女も自分のカップに口をつける。
お互い喉を潤した所で本題に入ろうとした時、彼女の方からゆっくりと口を開いた。
「……申し遅れましたが、私は中島ミツハと言います」
こちらに旋毛を見せたミツハは、顔を上げると涼しげな瞳で僕を見つめる。しかしその瞳は、疲れているのか何処か翳っているように見える。
「長谷川カズトです。ミツハちゃんって、珍しい名前だね」
「……母がつけてくれたんです。クローバーは幸せの象徴だからって」
軽く会釈をしながら言った僕の言葉に、先程から表情も乏しく淡々と話していたミツハが少しだけ瞳を柔らかくする。
しかし生物の講師としては、ミツハの母に教えてあげたい。
四つ葉も三つ葉も、一括りにクローバーとして認識されているが、花言葉はそれぞれ異なるという蘊蓄を。
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