接触 《長谷川カズト》

8/19
前へ
/327ページ
次へ
「愛されてるんだね」  今は要らぬ知識を飲み込んだ僕に、ミツハは今度こそ切れ長の瞳を細めた。 「……幼い頃に身体が弱かったのと、一人っ子といのもあって過保護なんです……」 「え、今は大丈夫なの?」 「はい。母が添加物やら何やら気にして、殆んど手作りにしてくれていて。食事から健康を取り戻したみたいで」 「そうなんだ。とてもお子さん思いな親御さんだね」  嬉しそうな顔で母親の話しをするミツハからは、心の底から母親を尊敬し愛しているという気持ちが伝わる。 「はい。自慢の母です……。って、私の話しばかりでしたね。ごめんなさい」  突然真顔に戻り肩をすぼめるミツハに、微笑む。 「いいんだよ。ミツハちゃんの話しを聞く為に、ここにいるんだから」 「……じゃあ、今度は質問してもいいですか?」   そう言うと、目の前で居住まいを正す。 「質問? 僕に?」 「はい」  少し身体を乗り出したミツハに頷いて見せると、ぷっくりとした唇が遠慮気味に動いた。
/327ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加