165人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
「……カズミさんって、どなたですか?」
一瞬、どうしてその名前を知っているのかと思った。しかし、最初に出会った時、僕は確かにカノジョの名前を呟いたことを思い出す。
「高校時代の彼女なんだ」
小さく息を吐き出すと、僕は目の前にあるコーヒーに手を伸ばす。
考えてみたら、誰かにこうしてカズミの話をするのは初めてのことかもしれない。後ろめたさから、ずっとカズミの話は避けてきたから。
「最初に会った時、私の顔を見てカズミって言いましたよね? そんなに私と似ているんですか?」
「……そっくりだよ。声と、背格好と、性格以外は」
するとミツハは、テーブルに小さく乗り出していた身体をゆっくりと引くと、浮かしていた腰を降ろす。
「じゃあ、今度は僕が質問してもいいかな?」
「はい……」
ミツハの顔色が何処と無く悪いように見える。しかし、きっと店内の明かりが暗いせいだろうと、僕は質問を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!