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「どうして、僕を避けてたの?」
初めて出会った時も、今朝も、ミツハは僕の顔を見て避けるような態度を見せた。
その理由が、僕は知りたかった。
「……カズミって言ったから」
「え?」
「……頭の中で、誰かがその名前を呼ぶんです」
どうやら照明のせいではなかったようだ。目の前にいるミツハの顔色が、どんどん後ろにできた影と同化していく。
「えっと……。それは、夢か何かってこと?」
「わかりません。朝目覚める前に名前を呼ぶ声が聞こえて、目を覚ますと物が移動していたり、身に覚えのない汚れが手に付着していたり、シャワーを浴びていたり」
「ちょっと、待って」
とんでもない方向に話しが進み、僕は一度頭の中を整理する為にミツハの言葉を遮る。
「……えっと。それって、夢遊病ってやつかな?」
「私も、初めはそうだと思っていたんです。だけど、それならカズミって頭の中で名前を呼ばれるのはどう説明をすればいいのかなって」
「そもそも、その名前自体が聞き間違えではなくて?」
すると唇を引き結んだミツハが、首をプルプルと横に振る。
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