接触 《長谷川カズト》

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「ハッキリとカズミって。だから、偶然出会った長谷川先生にその名前を呼ばれて怖くなっちゃって……」  確かに、頭から聞こえてくる名前を初対面の僕に呼ばれるなんて、さぞかし恐怖だっただろう。  それも偶然にも、その人物と容姿までそっくりだなんて。 「それはいつぐらいから?」 「一週間前ぐらいからです。あと、そ れだけではないんです。自分が誰かわからなくなったり、母に罵られる幻聴が聞こえたり」 「……えっと。先ずは、一つづつ考えてみよう」  確実に、僕なんかに相談をするのではなく、速やかに専門科を受診しなければならないレベルだと思う。    しかし最初から「病院」という言葉を口にしては、せっかく相談をしてくれたのに相手は見放された気持ちになってしまう。だから、タイミングを見て伝えなくてはならない。    それに偶然にも「カズミ」と、いう名前が出てきてしまった以上、僕自身も何処か他人事ではいられなくなっていた。 「お母さんに罵られる幻聴は、過去に実際あったということは考えられないの?」 「……母は、怒ることもないような優しい人なので。それは、ありません」
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