165人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
カズミと交際していた半年間を、夢のような時間とまでは言わない。
だけど喧嘩して仲直りして、キスして抱き合って。
それは一人では知ることのできない、とても幸せな時間だったんだ。
「そんな彼女に、僕は嘘をついたことがある。あと、勇気がなくて葬儀にも出れなかったし。色々後悔してるんだ……」
一人苦笑する僕に、今まで黙っていたミツハが躊躇いがちに唇を開く。
「……でも、最期の言葉にありがとうを選んだってことは、それがカズミさんの気持ちの全てだったんだと私は思います」
と、言いながら、テーブルの下で手をモジモジとしている気配がした。ミツハなりに、気を遣ってくれているのだろう。
「ありがとう」
「あの……、教師になったのも何かその経験が関係してるんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!