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それは長谷川先生が、私の言葉を笑い飛ばすことなく否定することなく、親身になって受け止めてくれたから。
“……頭の中で、誰かがその名前を呼ぶんです。”
ずっと誰かに話を聞いてもらいたくて、だけど「おかしい」と思われるのが怖くて、誰にも話せずにいた私の心を長谷川先生は救ってくれたんだ。
まだ問題は何一つ解決していないけれど、長谷川先生が言った通りに先ずは一つづつ考えていこうと思う。
私はポケットの中からシワシワになった紙を取り出すと、そこに書かれている携帯番号とメールアドレスを自分のスマホに登録をする。
そして、メールを送ろうとしたけれどやっぱり止めた。帰ってからゆっくりと考えてから送ろう。
早くなる鼓動から目を背けるように、電車のドアガラスの向こう側に視線を移す。しかしその瞬間、トンネルに入ってしまったガラスが映すのは、見慣れた自分の顔。
……私は、誰?
……私は中島ミツハ。
自問自答しながらホッとした私は、ガラスに映った自分の顔をマジマジと眺める。
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