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暗い部屋にジワジワと広がる赤黒い染み。両足のない身体を濡らすぬめりとした液体は、人肌のように温かい。
そっと目を閉じた瞬間、ゆっくりと離れていく気配。男は畳に爪を立て、最後の力を振り絞る。
__お前。
口を塞がれ声もでない男に気配で気づいたのか振り返る。
__悪いのは、あいつらだ。
突然、身体からガクリと力が抜けた。それ以上、男が動くことはもう二度となかった。
カサカサとした音が遠ざかる。その瞬間、滑り気のある赤黒い液体にはヒラヒラと何かが落ちた。
ガチャリと開いて閉まるドア。静寂を取り戻した部屋で、残された「それ」は血の海をユラユラと彷徨っていた。
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