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まん丸な額。切れ長の瞳。小さな鼻。ぷっくりとした唇。
この顔と、瓜二つの人間が存在するなんて想像がつかない。
しかし私とカズミさんはそっくりで、そのそっくりさんは私の頭の中に響いた名前と同じ名前だなんて……。
一体、何の因果があるというのだろう……。
いつの間にか電車はトンネルを抜け、紺色のベールに包まれた世界が広がる。
“……そっくりだよ。声と、背格好と、性格以外は”
ぼんやりと流れる景色を見ながら、切なさそうに歪む瞳を思い出す。
ユウコは長谷川先生に恋人がいないと言っていたけれど、それは今も心の中をカズミさんとカズミさんに対する後悔の念が、支配しているからなのだろう。
それなら、長谷川先生はどんな気持ちで私を見つめていたのだろう。私と話をしていたのだろう……。
その気持ちを想像すると、切なさでパンパンに膨らんだ胸が割れる音が聞こえた。
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