小説家さんと実家

2/23
前へ
/23ページ
次へ
 出来上がったプロットをメールで送り、時計を見ると時間は午後二時半を回っている。  朝食を変な時間に食べてしまったせいで昼にしては遅い時間になってしまったけれど、そろそろ昼食もとらないといけない。  作業にキリがついて視線を向けたのはノートパソコンの隣に置かれたスマートフォン。もしかしたら気付かない間に大河さんから電話が来ていたりメールが来ていたりはしないかと画面の電源を入れてみるが、そこにそれらを示す表示は出ていない。  迷惑だと思われるかな。と不安を感じつつも午前中に何度か電話をしたのだけれど繋がらなくて、着信があったことに気付けば連絡してくれるかなと思っていたのだけれど。  ふぅ、と息を吐いて立ち上がりはしたけれど自分ひとりのために料理をする気力が沸かない。  台所に向かう前に周囲を見回して目に入ったのは大河さんがベットサイドに置いていったソイジョイ。  昼だし、それで済ませてもいいかな。  大河さんにはそれで食事を済ませるのは体に悪いと言ったのだけれど、彼がここにいる訳では無いんだからいいだろう。  一応出したままになっている食事用テーブルの前に座り、手に持った細長い包みを開けてそれを口に運ぶ。  ブルーベリーか。茶色いバーをひとり黙々と咀嚼し、飲み込むことを繰り返すと五分ほどで食事が終わる。  意外とこれでお腹はふくれるんだな。立ち上がってソイジョイの包装を捨て、パソコンの前に戻るがプロットを送ってから十分も経っていないのだから当然なのだけれど庵さんからの返事はまだない。  今まではずっと食材を買ってきて調理をしていたから昼食にも夕食にも一時間ずつかかっていたし、ひとりだから食材を無駄にしないようにメニューを考えて買い物をするのにも時間がかかっていた。  何で今まで余裕がある訳でも無いのにそんなに時間を無駄にしていたんだっけ。  それまでは当たり前にやっていたことがとたんにバカバカしいことのように思えて、冷蔵庫の中の食材が無くなったらそこからは冷凍食品か弁当を食べるようにしよう。と自分の中で決める。  何だか手持ちぶさたになってしまったな。  やることが無いと先ほど確認したばかりなのに視線は自然とスマホのほうに向いてしまう。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加