小説家さんと実家

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 眠くて頭が働かないせいもあけれど、不規則な生活を送っていたせいで日にちの感覚がハッキリしない。さっきまで作業していて、右下に何と出ていたっけ。  別に、締め切りが近い訳でも無いしどうでもいいか。  今日が何日だったのかを思いだそうとするがそれを思い出したところで現状が何も変わらないことに気付いて考えるのをやめ、眠りにつくために目をつぶる。  スマホを持っていた手から力が抜けるのを感じるが枕横に倒れるだろう。とそのまま手の力を抜くとゴト、と鈍い音が響く。  やってしまった。そう思うが体は限界だったらしく落としたスマホを確認しなくてはと思う前に意識がすっと遠のいていく。  このまま寝たいだけ寝てしまおう。  完全に眠る体勢になったのに今度はドンドンと何かを叩く音がどこかから聞こえてくる。  上の階の人でも暴れてるのかな。ぼんやりとそう思うがその音は上からというより横から、玄関のほうから響いてきているようだった。  何か通販で買い物なんてしたっけ?  そう思ってからそれならチャイムを鳴らすだろうということに気付く。  じゃあ、苦情?  確かにここ数日、周りが寝静まっている時間に作業していることもあったけれどひたすらキーボードを叩いていただけだから騒音が出ることも無いし、カーテンは遮光カーテンに買い換えてあるから光が外に漏れていたことも無いのだけれど。  じゃあ、何だろう。  自分で考えようとして、そこでようやく玄関に出ればいいことに気がつく。  寝ようとしていたところだったのに。  頭がはっきりと覚醒していれば危機感を抱くような状況も今は面倒だなぁとしか思わない。体を起こしてベットを降り、その方向に向かうと扉を叩く音と同時に人の声が聞こえることに気がつく。  何か、言ってる?さん、にいさん? 「兄さん、兄さん!」  それに気がつくとすぐにその声にも聞き覚えがあることに気がつく。 「理央?」
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