追憶と現実

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「お疲れ!!」 約束の居酒屋に着くと先に入っていた美里が一杯始めていた 「お疲れ」 美里の前に腰を下ろすとその日の疲れがどっと押し寄せて来た 「大丈夫?今日大変だったみたいだね」 「うん、まぁな」 予定していた海外の取引先の納期が遅れ、そこから変更があり何かと手間取り頭を下げる事になった 「話なら何でも聞くよ」 古い付き合いだからだろう、美里には変に心を許せるし、美里も気を使う事なく俺の心の内をピンポイントに読んでくる それが何だかんだで有難い 「ありがとう、でもいい」 美里の一言で疲れが肩からすうっと抜けて行った 「今日は飲みたいし」 そう言って、メニューを広げていると 「生中お持ちいたしました」 お盆にジョッキと枝豆を乗せた店員がやって来た 「美里の?」 不思議がって聞いてみた、美里は普段ビールを飲まないからだ いつもは専ら今みたいな酎ハイばかり 「今日みたいな日は着いたらすぐ飲みたいだろうなって思って頼んでおいた」 「…って俺の?」 自分で自分を人差し指で指す 「うん、そうだよ」 そう言うと美里は手にしていた酎ハイを景気良く喉に流し込んだ 「お前最高だな!!」 「どういたしまして」 美里は照れを隠す様にニッコリと笑うと、酎ハイをテーブルに置いた 「とりあえず乾杯な」 いい具合に泡が立ったジョッキを掲げると、美里もグラスを上げたが… 「私のもう空っぽだ」 空になった美里のグラスを眺めてお互い笑った
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