過去と過ち

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雪野の部屋が何処かは分かっている、週末行った時に把握した 五階の1番奥の部屋、一つ一つ思い出しながらエレベーターに乗り込む 部屋に行ったのは一度限りで上がったのは玄関まで 部屋の中まで誘われたが、一歩踏み出すと違う欲求が湧き出て来そうで思いとどまった それでも愛らしい置物と、ドライフラワーが飾られた綺麗な玄関先には女性らしさを感じずにはいられなかった 今日も玄関先までにしよう、ちょっと顔見たかっただけだからとか…って事で 昨日の事だけ確認したら、明日から頑張れよ…とか言って笑って帰ろう 昨日の事だって俺の勘違いに決まっているのだから エレベーターのドアが開き雪野の部屋の階で降りた 近づくにつれて踊り出した胸を抑えながら雪野の部屋に向かって廊下を歩き出した所で足が止まった 男が出て来たからだ 遠くからでもよく分かる…昨日一緒にいた奴だ 出て来たのは1番奥の部屋…間違いなく雪野の部屋だ さらには玄関から顔を出して手を振る雪野の姿まで見える どう言う事だ… 見てはいけない物を見てしまった ありえない光景に思い描いていた物が音を立てて崩れて行く 踊っていた筈の胸の音は止み、代わりに体の血の気が引いて行くのが分かった 勘違いだと思っていたのに…思い聞かせていたのに… 俺以外の男に笑顔を向けている… 見てしまった光景から目を背けたくて、ブリキの様に固まった体を動かしてその場から遠ざかった
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