過去と過ち

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「どうしたの?急に」 見慣れた部屋に行くと理沙が機嫌良くドアを開けた むしゃくしゃする…この行き場の無い思いを理沙に話す気にはなれない ただ吐き出すだけ 「部屋入って、明日の事でちょっと散らかってるけど」 「あぁ」 と、返事するといつもの様に部屋に入った 散らかってると言ってもスーツケースの口が開いているのでは無い 仕事用のパソコンが開いたままでいるだけだ 「何んか飲む?いつものあるけど」 と、言いながらラフな格好をした理沙が冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出した よく飲む俺の好きな銘柄だ 理沙は俺の返事を待たず、グラスにビールを注ぎ始めた 「彼女と何かあったの?本当なら私の所には来なくてもいい筈でしょ」 「まぁ…な」 そう言うと俺は目の前のビールを勢いよく喉へ送った 理沙も悪戯に笑いながら自分のグラスを飲んだ 「話してくれていいよ、何んでも聞くから」 と、理沙は体を乗り出したが 「やぁ…いい」 と、遮った 俺は単にこの気持ちさえ何処かへ行けばそれでいい 「そう」 と、理沙は面白く無いのか一緒に持って来たサラミをつまみ、グラスを奥に流した 「でも、今日来たのには訳があったんでしょ?」 「まぁ…な」 思い起こすのは挑発する様な男の目 そして…怯えた雪野 全て…忘れたい!! 俺は残っていたビールを喉に流し込んだ
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