追憶と現実

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酒も進み腹の中も満たされた頃、美里が話を出した 「同窓会あるんだけど来る?」 ふざけては走り回った子どもの頃を思い出してしまう 甦るのはバカみたいに楽しかった事ばかり 一番何も考えなくていい時期だったのかもな そんな頃の奴らと会うのは大歓迎だ まぁ…雪野は来ないだろうけど 「いいよ、地元の奴らとだろ?いつだ?お盆?」 「今週の土曜」 一瞬吹き出しそうになった いつもの事だが美里の知らせは突然だ 「でも直ぐには帰れないぞ」 車1台あれば何とかなる話ではあるけれど 「大丈夫、こっちでやるから」 「…って?」 「うん、こっち出て来ているメンバーに声かけたら皆んな来れるって」 …なら気兼ねしなくていい、って言うと来るのは… 思い当たる顔を浮かべる 「智美も来るって」 今度は喉に行っていた枝豆までもが出そうになった 「それって…」 「雪野智美、忘れるわけないでしょ?」 …と言うか、常に俺の中に居続けている 「冗談じゃないだろうな?」 雪野は集まりがある会には好んで参加しない もっと社交的な奴だったら連絡先の1つ…いやそれ以上まで行けていると思う 「本当この前確かめた、藤堂直樹が来るからって」 俺はまたしても吹き出しそうになった 「なっ、何で俺の名前を!」 「ゴメン、勝手に使わせてもらった、だって2人共訳あり同士でしょ?」 「っても、もう時効だぞ!!」 「だからいいんじゃない?時効の過ぎたもの同士」 美里は何が面白いのか、ふふんっと口元が笑っている 「ふうっ…」 俺はよく分からないため息を吐くと前にあったグラスを手に取った 「悪い知らせではないでしょ?」 美里はまだ何処かにやけている 「まぁな…」 確かに悪い知らせではない 俺は変な興奮を誤魔化す様に中に入っていたアルコールを飲み干した
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