第一話「ヒーズ・ジーニアス・バット・チェリー」

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第一話「ヒーズ・ジーニアス・バット・チェリー」

「なんでこの曲の良さがわからんのだ! ファック! ファーック!」  暗闇の中、光るパソコンのモニターを血眼で睨みつけながら、聞こえるはずも無いのにワンカップを呷りながら自称天才作曲家のクズニートは貴重なリスナーに今日も吠える。 「お前いい加減にしろよ、寝ろ。夜は寝るのが一般常識だ」 「ファッカー、この曲を聴いてみろ!」 「声がでけえんだよチェリー。うわまた、こういう……」  ヘッドフォンから流れる再生数二三ほどの奇をてらった曲はもはや食傷気味なもので、 「ああ天才的だ、どうやったらこんな曲が作れるのかね」と最後まで聴いて居られず惑う頭が強制的に起きる音圧、目紛るしいコード進行、やたらな転調にやられヘッドフォンを置いてそう皮肉をいうも彼は酔っ払って真に受け、誇らしげに腕を組んで今を語り出す。     
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