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しかし幸か不幸か仕事場が入国ターミナルから宇宙船の波止場になった。人一人が持ち運べる禁制品には限度があるが、宇宙船となると一気にヤマは大きくなる。新聞で取り上げられるような成果も、大抵は宇宙船まるごとの検査だ。
宇宙船置き場はかつての職場だった。結婚を理由に異動したが、離婚した今となっては戻りたくて仕方がなかった。
ターミナルのカフェで朝食代わりのカプチーノを飲み終えて僕は職員専用口から管理課に向かった。僕と組むことになる税関職員は既に到着していた。
「やっと来た。彼がカルロ=ウォーカーだ」
部屋には局長と課長が揃っていた。遅れたことを非難したそうだが、客人の手前では口にしなかった。どうせ後になって言われるだろう。
「よろしく。えっと……」
「メリー=クー」
交換人員は女性だった。僕よりも背丈は頭二つ分くらい小さく、華奢な印象だった。ただ、その凜とした面持ちにパンツスーツは似合っていた。
「初日だ。今日のところは検査に当たらないで、港の案内をしてくれ」
課長が僕に言って、局長を見送りに部屋を出て行った。応接室に僕と彼女だけが取り残された。
「じゃあ、この辺りを案内――」
「図面を覚えてある。必要ない」
もしかして待たせたことに腹を立てているのかもしれない。いやにぶっきらぼうな言い方だった。
「なら、もう検査に加われるか」
「そうしてもらえると助かる」
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