ニュービー

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 僕としても研修を省けるのは有り難かった。僕らは足早に船着き場に赴いて、監視室に入った。ここではランダムにピックして検査するチームと、当たりをつけて打ち抜き検査をするチームに分かれている。僕と彼女は後者だ。  現在管制下の航行責任者リストを見て、気になった素性を調べていく。実際の検査よりも大半はこれに費やされる。打ち抜き検査の筆頭候補は前科者、滞在先が不明瞭な者、特定の麻薬生産国を経由している者だ。  彼女もリストを見ているが、端末で素性を暴いている様子は無かった。どうやら彼女は高度に電脳化しているようで、僕なんかよりずっと早く絞り込みを終えてしまっていた。 「見つかったか?」 「こいつがトップだ」  僕は彼女に登録証を見せられた。提出された申告書では、特に怪しい部分は見受けられなかった。それどころか、穴のない申告書だから文句なく通して良い部類だ。 「どうしてこいつを?」 「まず経由地だ。この目的地に行くにしては迂回が多い」 「でも、行商人だろ? ICチップの税関手続きが済んでる」 「出たばっかりなのに随分と在庫が少ないし、引き返さず目的地に行くつもりだ。それにICチップの販売にこの数のクルーは必要ないだろ。この量で利益が出せるのは他に薬物だけだし、それなら警護もつく」     
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