ニュービー

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 筋の通った推論だった。僕に反論できる余地がなかったから、まず彼女が最も怪しいと考えた船を検査することになった。航行責任者を呼び出して、検査の旨を伝えて立ち会わせる。  最初はにこやかだったけれど、強制検査だと伝えると航行責任者は狼狽した様子だった。こちらの方が気を揉んでしまうような慌て方だったが、彼女は冷徹に手続きを進めていく。  貨物室に入って、僕は木箱を開いた。中にはバルク品のICチップが詰まっていて話の通りだったけれど、酸っぱいような臭いを感じ取ってしまった。  結構な割合で違法薬物は酸っぱい臭いがする。精製の際に使う溶媒の除去が不十分だからだ。どうも、彼女の推理は命中しているらしかった。彼女を貨物室に呼んで話すと、彼女は真っ先に一つの木箱に狙いを定めた。 「あの箱だけ、熱を発している」  恐らく彼女の機械化された目は赤外線を捉えることができるのだろう。僕には分からない情報を易々と入手して、それを生かしている。僕が属する組織は機械化して業務に生かしても全く給料に反映されないから、自主的に手術を受ける者はほぼ居ない。  箱を開くとより強く酸っぱい臭いが広がった。酢酸系溶媒よりも、腐ったような臭いだった。  箱の中には人間が入っていた。長らく清潔を保っていなかったようで、それによる臭いだった。彼女は振り抜きざまにパルスガンを抜いて航行責任者を撃った。     
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