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 どうやら幼馴染の麻綾が朝食の用意をしてくれていたようだ。妹が失踪したあの日からぼくを心配している彼女は、こうしてぼくの面倒をよく見てくれた。もうぼくはここ数月、学校には通っていない。そんな気にはとてもなれないし、ぼくはもともと影の薄い方だったから、多少姿が見えなくなったところで、そこまで騒ぎ立てられはしないだろうとそう思っていた。ぼく一人が居なくても世界は回っていくのだ。それに今、ぼくの心には鬼が住み着いている。他人と接することすら避けたいのだ。妹の沙羅が失踪した日、そしてぼくが鬼を心に孕んだその日、それはいずれも今日のように黒い雨の降る日であった。  僕の時間は数月前から止まっていた。それは6月の半ばに差し掛かった雨の日のこと。ちょうど通っていた学校が休みの日であったその日、当時中等部に進学したばかりの妹の沙羅は、友人の家に遊びに行くといったきり、僕の前に姿を現すことはなかった。はじめは友人の家に寝泊まりをしているのかと思っていたのだが、沙羅はいつもそんな時、必ず家に連絡の一つは入れているはずなのだ。しかしそれから二日ほどたっても何の連絡もない。警察に捜索を頼んでも一向に見つかることはなかった。沙羅は突然、謎の失踪を遂げたのであった。特に前触れなどはなかった。ぼくと沙羅の関係は良好だった(年頃の女の子としては兄に対する執着が強く、少し仲が良すぎるくらいだったかもしれない)し、何かに悩んでいるような様子もなかったように思えた。幸い交通事故などにはなってはいないようではあったのだが、本当に忽然と姿を消したのだ。ぼくはその日から、自分でも驚     
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