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「なんだ初めて会うたばかりだのに、随分と嫌われたようじゃな。じゃがお前が儂を視認した時点で、お前の中に儂は固着した。儂はお前の中に生きる存在になったんじゃよ。」
この少女の言うことが理解できなかった。起こっている事態に理解が追いつかないぼくは、ただただ困惑していた。
「な、何言ってる!だいたいここはぼくの心の中なんだ!ぼくの理解できない存在なんているはずないじゃないか!」
「ほおう意外にも冷静じゃな。しかし和哉よ。お前さんも、一度どこかで見かけたような、自分の記憶の中でもおぼろげな情景がふと思い浮かぶ…なんて経験くらいはあるじゃろう?こいつはそれとにたような事かも知れんとは考えられんか?」
それとも…と鬼は続けざまに言う。
「儂がお前自身の一部、側面であると考えてみたら…どうじゃ?」
ぼくは唖然とした。この鬼の少女がぼくの一部分であるなど、そんな話はとうてい信じることはできなかった。だいたい心の中にもう一人の人間(鬼?)がいるなんて、それではまるで二重人格のようではないか。
「それは少し違うな和哉」
鬼はぼくの思考を透かしてみているかのように話す。
「儂は今までお前が視認していなかっただけで、お前の一部であったものじゃ。儂は本来特定の姿などは持ってはおらぬ。この少女の姿もお前の記憶から生まれたものよ。どこかでみた覚えがあるのじゃろう?」
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