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家を出て少しした町外れにある古びた教会へ足を踏み入れた。庭の草木はあまり手入れがされていないのか、伸び放題の有様が外からでも確認できる。手前に付いている呼び鈴を一度鳴らし、鍵のかかっていない戸を開く。奥行きのある大部屋へ出た。古びた、おそらく女性をかたどっているのであろう像が、この広い部屋の中で大きく存在感を示している。ぼくはここに何回か訪れたが、この大部屋がなにかに使われているところを見たことがない。昔はここで時に信者が集まり、神に祈りを捧げていたのだろうか。
「和哉ね?お茶をつぐわ。少し待っててちょうだい。」
奥の部屋から声と共にゆっくりと足跡が近づいてくる。
「いらっしゃい。今日はどうしたの?また学校サボり?」
この教会の主であるシエルはからかうようにそう言った。この人は、ぼくをすぐ子供扱いしてくるきらいがある。
「そんなところ。どうしても学校には行く気にならないんだ。それとも、ここに来るのにいちいち理由がいるの?」
「もちろんいらないわ。むしろこんなかわいい男の子が来てくれて、賑やかになって良いくらいよ。」
「そんなおだてたってなにもでないよ。それにかわいいとか言うのやめて欲しいな。ぼくだって男なんだ。良い気分じゃない。」
ぼくは男なら常に毅然としているべきと考えていたから、かわいいなんて言われるのは好きではなかった。しかし彼女には小さな頃から世話になっていることもあって、こういう物言いをされると頭が上がらないのであった。
「あら?なあに大人ぶってるのよ?わたしからしたら、あなたなんてまだまだお子ちゃまよ。」
「いいさもう。こうして学校サボってこんなところに来てるんだ。どうせぼくはお子様だよ。」
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