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また何かあったらわたしにまた言ってちょうだい、最近この町も物騒だから。と彼女は最後に言い残し、奥の部屋に戻っていった。その後、ぼくは無人になった部屋で出されたお茶を飲み干し、教会を後にした。   外に出てみると、空は変わらず黒いままであったが、すっかり雨がやんでいることに気がついた。気のせいかも知れないが、この町は特に曇っていることが多い気がする。まるでぼくの心境に呼応しているかのようだ。 接触自体はここ数日はしていないが、鬼は今もぼくの心に巣くっている。鬼は自分の事をもう一人のぼく自身であると言っていた。 ぼくは最初にアレと出会ったときから、いまだその存在を認めることができないでいる。ぼくの理想と呼べるであろう姿で贖罪を迫ってくるアレは、まごうことなき鬼だ。まだ小説や映画で出てくるような異形の姿をしている方がましだ。 自分自身の醜さと向き合う時、それは人が最も苦しみを抱く時だ。理想と言えば聞こえはいいが、それは自分の醜悪さの裏返しでもある。 いずれ折り合いをつけなければならなかったのだ。沙羅を失い、悲しみの底に居た時、たまたま鬼という名のぼくの負の側面が顔を見せたにすぎない。きっかけがそれであっただけだ。ぼくが未だにあの子に執着していることは、やはり罪なのであろう。ならばやはり鬼とは、いつかは自ら取り合わなければならない時はくる。
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