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そんな闇を引き裂くような元気な声を、母親はどこか遠くを見つめて聞いていた。
「ご、ごめんね……お母さん、おまえを太陽の下に産んであげられなかった……」
今日、夜の住人がまた一人、静寂に包まれる中誕生した。
曇りガラスの小窓の向こうに、黒い影が通っていった。
「滝本さん。申し上げづらいことですが……」
滝本明美と書かれた病室にて、ベッドのそばに歩み寄った医師が複雑な顔をして告知をしていた。
「やはり、赤ちゃんは夜生まれですね……。皮膚の検査結果も、日光への免疫反応がないことを示しています」
PM11:00。
一度話し始めた医師は、もう調子を取り戻したように、澱みがなかった。
出生直後の一度きりの機会に抗体がつくられず太陽光の有害線から身を守れないとか、戦前のオゾン層バリアの破壊がなれけばどうだの、研究は今後も進んでいくだのと、型通りの説明が続く。だが、もう耳には入ってこなかった。
「そう……ですか……」
滝本明美は、陽の射し込む窓の外へ目を向けた。
「抱かせては……いただけないのでしょうか?」
「規則ですから、すみません」
夜が明けても隣には、個室にしてはやや広めの空間ががらんと広がっているだけだった。
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