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アキコ姉は頷く。
「長い散歩になりそうね。でもいいの、ミナト君。帰れなくなっても」
やっぱりアキコ姉は僕の考えに気づいている。
「何でそう思いますか」
「顔に書いてあるもの」
勿論本当に書いてあるわけは無い。
でも僕はアキコ姉の言葉に驚きつつもちょっとだけほっとしている。
色々とごまかしたり騙したりする必要が無くなったから。
「ミナト君はこの調子でいけば大人になれるし、無茶することはないと思うわ」
「でもそうやって大人になって何が残るんですか」
「自分の子孫を未来に残せるわ。それは学校でも習ったでしょ」
「そうかもしれないけれど、でも思ったんです。それに……」
僕はつい思ってしまった事を口に出す。
「僕が残したいとすれば、アキコ姉と僕との子孫を残したい」
そう言ってふと恥ずかしくなった。
僕はとんでもない事を言っているのではないだろうか。
子供を作る方法は知っている。
決められた日にシステムに選ばれた相手と性交する事だ。
身体の調子や状況をシステムが管理調整した上での事なので、数日生活を共にして性交すればほぼ確実に妊娠する。
妊娠した女性は専用の管理居住区に移り出産。
子供が乳離れするまでそこで暮らす。
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