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#6
第一居住区を通り、壊れた非常扉からまた通路に出て、発電所区画の横を通る。
この辺りはまだ団地の図面に載っている。
でもここまで来る人は多分いない。
もはやこの辺りの機器について知っている人はいない。
全自動化され故障修理も自動で行う機械群に全てを任せるだけだ。
最低限の照明だけは灯っている通路をアキコ姉と二人で歩く。
「ここはまだうちの団地なのかな」
「まだ図面に載っている範囲です。もう少し先に隔壁があって、そこから先が団地の外になります」
「ミナト君はこの辺りには来たことがあるの?」
「その隔壁までは。だからそこまでは大丈夫です」
「凄いな、良く知っているんだね」
そう言われると少し恥ずかしい。
特に役に立つだろうと思って来たわけじゃない。
単に知らない場所をこっそり探検するのが楽しかっただけ。
他の人は知らない場所を知っているという優越感もある。
でもまさかアキコ姉とここを歩くとは思わなかったけれど。
結構歩いてようやく隔壁の場所。
ここの隔壁は横に非常扉があって、そこを通れる。
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