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 漆黒の空に散りばめられた星々の中にいる。  私は今生まれたばかりで、意識だけの実体のない存在だ。  それはまぶたの裏に浮かべる夜空に似ている。意識は秒より小さな単位で増殖し、私に“松村すみれ”と名前を与えた。  私は増殖し続け、“会いたい人”という単語を追加した。  私の意識は次第に会いたい人に向かう。会いたい人の詳細は拡大し、細部までくっきりと思い出す。  最後に“柴崎透”という名前が現れた瞬間、星空は反転し、私は真っ暗闇に落っこちた。
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