またたき

３

「結婚はしないのか」
　年が明けて家族と親族で集まった時に、デリカシーのない父親に問われた。
「そろそろ子どもを産まないと」
　と言ったのは、父親の質問の尻馬に乗った親族だ。
　子どもも大人も入り混じった正月の席で、すみれは苦笑いを浮かべた。
「結婚なんてまだ早いよ」
　日本人女性の結婚の平均年齢を挙げ、早々に話を打ち切った。何も言わなかった母が、神経質に耳をそばだてていたのを、すみれは見逃さなかった。
　周囲の同じ歳頃の友人たちも［結婚する・しない］を話題に挙げることが増えた。すみれ自身もテレビやインターネットで結婚・出産に関する記事が目につくようになった。
　［歳の差婚］［相手の親との同居］［介護］［出産の期限］という言葉に引っ掛かり、つい詳細を見てしまった。
　しかし柴崎はすみれとの付き合いの中で結婚のけの字も出さない。付き合いが長くなっても、彼の親族に会うことは一度もなかった。付き合った当初に、結婚はしないと宣言されているのだから、当然と言われたら当然ではある。でも、とすみれの思考が一時停止し、疑問を投げかける。
　これから先もずっとこのままなのだろうか？