奈波と洋人

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高校の文化祭の代休だった昨日。 幼馴染みの洋人が、都会にいるお兄さんを連れて家のレストランへとやって来た。 お兄さんを最寄り(と言っても車で3時間くらいかかる)の新幹線の駅まで車で迎えに行き、その帰りに、私に手土産を持って。 先日出来たばっかりのマカロン専門店の詰め合わせを、私は勿体なくて食べることも出来なくて、ただずっと眺めている。 洋人が夏休み中にあった「みなと祭り」で稼いだアルバイト代を使って買ってくれたんだと思うと、余計に簡単には手をつける事が出来ない。 カラフルなマカロンを眺めながら、ひとり感傷に浸ってしまう。 「ほらー、早くしないと電車に遅れるわよー!」 お店の方から母さんの声が聞こえて、我にかえる。 私はマカロンを冷蔵庫にしまうと、急いでカバンを持って家を出て、これを逃したら遅刻してしまうほど本数の少ない電車の駅へと向かう。 洋人に会ったらすぐにお礼を言わなくちゃ、と思いながら。
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