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その洋人の目の腫れぼったさをちゃんと確認したくて、私は無言でぐいっと洋人に近付いて顔を覗き込んでしまう。
さすがに私の動きを不審に思った洋人が、私の視線から逃れようと体を大きく動かして私に背を向けた。
「洋人?」
「何でもないって!」
洋人の背中から、構わないで欲しいという雰囲気をひしひしと感じて思わずたじろいでしまう。
語気を強めて拒否反応を示されては、さすがの私でもこれ以上声をかける勇気はなかった。
どことなく気まずい空気が流れて無言のまま、時間通りにやってきた電車にトボトボと乗り込んで、私は洋人から少し離れたところに立った。
チラチラと斜向かいに立っている洋人の様子を伺ってみるけれど、やはりいつもの元気はなくボーっと視線が定まっていない。
昨日、お店にいる時までは3人であんなに楽しそうにしていたのに。
私の気持ちなんか知らない洋人は多分無意識にため息をついていた。
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