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いけにえ
夜もとっぷり更けた、T府の商店街が近くにある駅の前。そこにちょっとふくよかな体形の20代前半かと思しき男性が立っていた。
「会社でうわさになっていた、あの話…まさか、な。」
彼の名は森繁 武。T府F市にてビルの清掃員をしている男だ。
なぜ彼がこの駅前に立っていたのか、というとこの駅は森繁 武の家の最寄りの駅であるのも一つの理由ではあるが。本当の目的は・・・あるうわさの調査のため、だった。
きっかけは何ら変わり映えもない、森繁の会社の人たちの世間話。
それは少しばかり怪談じみた話題へと変わっていた。森繁もそういった話題に興味がないわけではないのだが、実際に行こうとは思ってはいなかった。
やれしめ縄でくくられた木で囲まれた場所に行くと世にも恐ろしい体験をするだの、
やれ山に行くとお化けと強制的に結婚させられるだの、
やれW駅で痴漢冤罪で投身自殺した男性の霊が出るだの。
会話の内容もそんなもの。
昼休みなどで話されるその怪談じみた話を、森繁は盗み聞きしていた、のだが。
ある時話題に上がった、その怪談に森繁は反応をした。
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