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「フン、アンタは一回もあたしの言うことを信じんかったね。この分じゃああたしの今際の際まで信じんやろね」
こう言って祖母はクルマを走らせて去っていった。赤いちゃんちゃんこを着て暫く経つと言うのに未だに高速道路をクルマで流しているパワフルさを見せているところ、お迎えはまだまだ来ないようだと息子夫婦は安心していた。
祖母の見送りが終わり家の中に戻りテレビを点けると天気予報が放送されていた。いかにもビジュアルだけで採用されたような美人の気象予報士がノースリーブのセーター姿で宣う。
「寒いですね~」
当たり前だ。ノースリーブで寒いと言われても「はぁ、そうなんですか」と肯定しつつも心の内では馬鹿にすることしか出来ない。
「今日から明日にかけての予報なのですが、日本海からオホーツク海にかけて低気圧が発達し停滞して非常に強い冬型の気圧配置となります。気温も低く、日照時間も短いので雪も解けにくく都市部では珍しくメートル規模の積雪になることが予想されます」
そうか。明日は雪合戦が出来るな。少年は童謡の庭を駆け回る犬のような気分で床に就いたのだった。
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