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更に翌日のこと、厚手の布団に毛布まで敷いているのに少年は寒さで目覚めた。いつもなら起きても「寒いなぁ」で済む話ではあるのだがその日ばかりは話が違っていた。全身が寒いを通り越して痛いと言えるぐらいに辛いのだ。それに真暗い、台風が来る前に雨戸を全部閉めた時と同じぐらいの暗さである。少年は雨戸なぞ閉めてはいない。何気なくカーテンを開けてみると信じられない光景が広がっていた。いや、光景とは言えないだろう。なぜなら真白いのだから。窓の向こうは雪の壁であった…… 触ってみると冷たい雪の壁そのもの。
少年がリビングに降りると母親が誰かと電話をしていた。母親は少年の姿を見るなりに受話器を差し出す。
「お婆ちゃんから」
「?」
疑問を呈しながら少年は受話器を取った。暖房がかかっている部屋のはずなのに受話器は氷のように冷たかった。
「もしもし」
「ほおら、お婆ちゃんの言ったことは本当だったろ? 二階の窓まで雪が積もっているじゃないか」
してやったりと言った口調で祖母がまくし立てる。受話器の向こうの顔は鬼の首を獲ったかのようなドヤ顔であることが予想された。
「お婆ちゃんが子供の時はこんな雪でも学校に行ってたんだよ」
「僕らみたいなヤワな子供は休校休校!」
その時、少年のスマートフォンが鳴り響く。どうせ休校の通知だろうと思い画面を見ると信じられないものだった。
【本日は通常通り授業を行います】
昨日の3メーターぐらいの積雪で休校だったのに、明らかに7メーターか9メーターは積もっている現状で休校じゃないとはどういう事だろうか。明らかにおかしいとは思ったが少年は登校の準備をした。
「いってきーます」
少年は高らかな声を上げながら玄関のドアを開けた。例によってドアの向こうは雪の壁であった。流石にこれでは外に出ることが出来ない。
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