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通学路の様相も様変わりしていた。このまま通学路を歩きたいところだが、生憎と通学路は雪の底に沈んでいる。その代わりに学校まで雪の上を歩いて直線で行くことが出来るようになっていたのでそのまま直線距離を歩いて行くことにした。
少年は通学路の途中にいる庭に繋がれたサモエドの事を考えていた。庭に繋がれているあの犬はどうなったのだろうか。流石に今日ばかりは座敷に入れてもらえた事を心から祈るばかりだ。
「わんッ!」
サモエドの声が聞こえた。無事を確認して少年は心から安堵した。しかし、姿が見当たらない。どこにいるのだろうかと目を凝らしてみると屋根の上で伏せの体勢で大欠伸をしながらこちらを眺めていた。近くに大きな穴があるところ自力で掘ったのか飼い主の出勤路に追従して出てきたのか…… いずれにせよご苦労さまとしか言いようがない。
班員全員がサモエドをいいこいいこと撫でようと駆け寄る。いつもなら柵の上に体を乗せて舌を出してハァハァとしながら少年達を見送ってくれる。それを撫でてから学校に行くのが少年の班の恒例行事である。今回は屋根の上でそれをする、多分ではあるが一生の内でそんな経験はそうそう無いだろう。1人の低学年の少年が大股開きでその場をひょいと跳んだ。
「どうした?」
「電線があった」
少年は祖母が言っていた事を思い出した。絶縁性の高いゴムで包まれた電線を踏んだところでどうと言うことは無いだろう。しかし、数千ボルトの電流が流れているものを踏むのも何かとよろしくない。
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