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少年の班は学校に辿り着いた。だが、例によって正門は勿論の事グラウンドは雪に埋まっていた。見えるのはバスケットゴールの先端だけであった。昇降口も当然雪に埋まっており下駄箱で上履きに履き替える事も出来ない。とは言うが「長靴なんかダサくて履かない」と思っている少年たちの靴は今現在雪で濡れきっており上履きに履き替えたくないと心から思っていた。
「学校入れないし帰ろうか」
少年がこう呟くと二階の窓より手を振る教師の姿が見えた。少年の班がそちらに歩くと雪に足が沈まないようにするためかスコップで叩いて整地されていた。その代わりに滑るようになってはいたので気をつけて窓から校舎内に入った。
「お早う、すごい雪だね」
普通なら真っ先に休校にすべき程の豪雪に何を言っているのだろうか。
「いやー、よく来れたねぇ」
「普通、休校じゃないんですか?」
1人の高学年の女子が尋ねた。至極当然の疑問である。すると、教師は訝しげな顔をしながら言った。
「いやあな。私も当然休校とは思ったのだが校長先生が「昔はこの位の雪が普通」の地域の出身でね。これぐらいで休校は甘えとか言い出してね」
祖母の同類がいた。今度紹介してやろうと少年は心の底から思うのだった。
その後、全校集会が始まった。校長が昔いた地域の雪深い地域の話で20分以上も話が行われた。いつもの「校長の話のマニュアル」の棒読みとは違って思い出話なせいか生き生きとした態度を見せていた。それを延々と聞かされる児童たちに取っては拷問そのものである。体育館中に置かれた大型ヒーターも飾りに過ぎない。スマートフォンの温度計を見ると一桁台で余計に寒く感じるのであった。
結局、体育の授業が雪合戦になり、給食は業者のトラックが雪で動かないと言うことで近くのスーパーマーケットのご好意でお弁当やパンを頂く事になった。その2点だけの違いがあったぐらいで通常通りの授業で今日を終える事になった。終わってみれば雪合戦に通常とは違う給食は楽しかったと言えた。少年はこの冬の日の思い出を胸に家に帰ることにした。
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