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序章:千堂優理・二
この世界は、ゆるやかに滅びへの一途を辿っています。
シアと名乗った女性は、物憂げな表情でうつむいた。
「世界のバランスを保ってきた力が、三つに割れてしまったのが原因です。私たちは、それを再び一つに戻したいのです。どうか、お力を貸してはいただけませんか?」
「もちろんです、私にできることでしたら」
まだ説明が始まったばかりの段階だが、やはり優理は、二つ返事で了承した。
見ず知らずのお年寄りを助けに、迷いなくホームへ飛び下りるような優理のことだ。躊躇などあろうはずもない。
なにしろ、偶然のタイミングかもしれなくても、相手は命の恩人なのだ。
その恩人が、困り果て、自分に助けを求めている。となれば、ここがどこであろうと、無理難題を押し付けられようと、首を横に振る選択肢はありえない。
「できるだけ頑張りたいんですけど、その、世界平和……みたいな大きなお話だと、何をどうしたらお力になれるのか、ちょっとわからないんですが」
勢いよく首を縦に振っておいてから、申し訳なさそうにし始めた優理を見て、シアは柔らかな笑顔を見せた。
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