お金の作り方

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お金の作り方

エミリは渋谷を歩いていた。 センター街から公園通りに出たところで男に声をかけられた。 「アルバイトしませんか。時給三千円からありますよ。」 思わず立ち止まって男の顔を見た。 「体験入店だけでも今日一日で五千円。どうですか。」 チャラいけど大学生みたいで話しやすそうな感じだった。 「もっと沢山もらえる仕事はありますか?」 ウィンクしてエミリを上から下までサッと見ると、 「あるある。即金で三十。」 「三十!?」 「とりあえず事務所行こうか。」 手招きされた。 男は携帯電話で事務所と連絡を取りながら歩いた。 ドキドキしながら後を追うエミリ。 どうしよう。 即金で三十万ももらえるバイト。 いったい何のバイトなんだろう。 逃げるなら今だ。 走って逃げようか。 迷いながら雑居ビルまでついてきてしまった。 一度も男は振り向かなかった。 もしかしたら やめておけよ。 逃げろよ。と 思っていたのかもしれない。 でも逃げられなかった。 だってどうしてもお金が必要なんだもの。 古い雑居ビルのエレベーターは狭くて音がうるさかった。 「いまいくつ?高校生か。」 「高二、十六。」 「名前を書くときは十八にしておいたほうがいいよ。生まれ年からマイナス二してね。」 エミリはうなずいた。 ガタガタと音を立ててエレベーターの扉が開いた。 狭いエントランスにすぐドアがある。 「おつかれさまでーす!」 男が明るい声で言って、エミリを中へと案内した。 応接セットみたいなテーブルとソファがあり、簡単な履歴書のようなものを書くように言われた。 エミリは慎重に生年月日を二年偽って記入した。 書き終わって手持ち無沙汰に部屋の中を見回していたところに、香水の匂いをプンプンさせた女の子が入ってきた。芸能人みたいに可愛い女の子だった。 「おつかれさまでーす。」 後を追うように中年の男が入ってきた。 「マミちゃん、ご苦労さん。」 金庫から万札を取り出して数えて見せる。 「今日も良かったね。続編の続編も期待してるよ。」 二十万円を渡した。 マミと呼ばれた女の子は受け取りのサインをして、現金をバッグにしまった。 「頑張ってね~」 エミリに手を振って出て行った。 中年男がエミリの簡易履歴書を見て言った。 「エミリちゃん、現金すぐ欲しいんだよね。今まで経験は?」 「何の仕事ですか?」 「AVだよ、アダルトビデオ。」
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