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「ありません。」
思わず右手を顔の前でノーというように振った。
「今ね、ちょうど一本撮り終わったところなんだよね。さっきの女の子ね。君、すぐに現金が必要なんだったら今日これから撮影出来るけど、どうしましょうか。」
男は一ミリの笑顔も見せず、真剣な表情で商談を持ちかけるように語りかけた。
この男にとってはこれは商談なのだ。
エミリは黙って固まった。
男の携帯電話が鳴った。
男が明るい声で話し出す。
事務所のタレントが週刊誌のグラビアをというような内容の会話を嬉しそうにひときわ大きな声で話していた。
男が通話をやめた瞬間に
「やります。」
エミリは男に向いて言った。
契約書にサインさせられた。
細かな字が羅列していてよく解らなかったが、性病じゃないかとか妊娠してないかとか、何かあっても訴訟を起こしたりしませんみたいなことや、逆に契約違反した際にはみたいなことが書いてあったと思う。
どうでもよかった。
さっさとお金をもらって中絶手術を受けに行きたかったのだ。
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