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痩せている。髪の色は黒く、瞳は大きそうだ。街灯に照らされた、肌の色は色黒く、どことなく南米とか、そのあたりを感じさせる雰囲気の子供だった。
しばらく見つめ合っていたが、奇声をあげ走り回り始めた。先ほどの声はこの子のものだったらしい。
「〇〇!!」
声がして振り向くと、女性が立っていた。顔立ちからして、あの男の子の母親だろう。言葉は聞き取れなかったが、名前を呼んだのだろうか。
「こっちへ、もどってきなさい!!」
頭の中に響くように声がした。今考えると、おそらく日本人でないだろう女性が、自分の子供を呼ぶときに日本語を使うことには違和感があった。
焦ったその声で、わざわざ使い慣れない言葉を使うものだろうか。
もちろん外見の印象で外国の人だと思っただけで、日本人だったということかもしれないが。
「〇〇!! もどってきなさい! 帰るわよ!」
男の子は母親の言うことを聞かず、母親とは逆方向に走って行ってしまった。
「もう、知らないわよ!」
女性はそう言うと、私と同じ進行方向に歩き始めた。こうすれば、男の子が観念してついてくると思っているのだろうか。こんな深夜に心配ではあったが、見ず知らずの他人であるし、私も自分のアパートへ帰るため女性の後に歩いた。
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