氷の煙

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氷の煙

 3連休に入る前日の夜。  渡辺 裕介(わたなべ ゆうすけ)は、にやけ顔をテレビ画面に向けていた。 (いやーやっぱりハルカちゃんかわいいよな…! あんな彼女がほしい…)  時刻は午前3時を過ぎている。テレビでは深夜アニメのエンディングテーマが終わり、番組が切り替わるところだった。 (でもあの子、女の子が好きだしなー…いやいや、妄想だったら別になんでもアリ…)  裕介は、脳内であらぬ妄想を育てる。そんな彼の耳に、これまでとは全く毛色のちがう音声が入り込んできた。 ”野菜不足に悩むみなさんのために、スペッシャルな商品をご用意いたしました! それがこの『菜皇(さいこう)』! この1杯の中に、1日に必要な栄養がすべて入っております!”  それは健康食品を売る、通販番組のアナウンスだった。  テンションの高さに全振りしたその声は、妄想世界の構築を完了させつつあった裕介の気分を台無しにしてしまう。 (うるっせぇ)  彼はいら立った顔でリモコンを持つと、テレビを消した。  連休前の深夜ということでまだ遊び足りない気持ちはあったが、通販番組のおかげで白けてしまったせいもあり、そのまま寝ることにした。  翌日、連休1日目。     
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