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彼女がくれる飴は、老人が好みそうな昔ながらのものだけでなく、子どもが喜びそうなフレーバーも多かった。ただ今回、裕介がもらったのは、昔ながらのものだった。
彼がそれを見つめていると、ツルはすまなそうに言う。
「ごめんねえ、ちょうど今はそれしか持ち合わせがなくて…」
「あ…! い、いえ、ありがとう……ございます」
裕介はあわてて顔を上げ、彼女に礼を言った。その言葉にツルは笑顔を返し、彼の前から去っていこうとする。
それを見た裕介は、彼女の背に向かってそっと言った。
「…あの、ツルさん」
「ん…?」
名前を呼ばれたツルは、不思議そうな顔で振り返る。その動作を見て、裕介は全身が再び緊張でこわばるのを感じた。
(呼んだ…呼んでしまった)
思わず、もらった飴ごと右手を握り込む。
(呼んだらもう、後戻りは…できない!)
真剣な眼差しで彼女を見つめると、少しだけ声を震わせながらこう切り出した。
「『菜皇』って、健康食品のこと…なんですけど」
「おや、ゆうちゃんは『菜皇』を知ってるのかい?」
「テレビでよく見るので…」
「ああ、そうだったね。ちょくちょくテレビで見るねえ…それがどうかしたのかい?」
「うちのばあちゃんに、オススメしたっていうのを聞いたんですが」
「トメさんに? うん、オススメさせてもらったよ。あれを飲み出してからずっと、体の調子がいいもんでねえ」
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