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台所に向かいかけたトメは、そちらに体の正面を向けたまま不思議そうな顔で裕介を見つめる。
その裕介は、ちゃんと言わなければいけないと頭を強く左右に振ってから、彼女をしっかりと見つめた。
そしてついに、決定的な言葉を言い放つ。
「『菜皇』って、ヤバい薬物が入ってるんだ。飲むの、やめた方がいい!」
「………!?」
裕介の言葉を聞いたトメは、驚きに目を見開く。瞬時に意味を理解することはできなかったようで、絶句したまま何度か瞬きをした。
やがて四度目の瞬きを終える頃、彼女の口からこんな声が漏れる。
「……はァあ?」
曲がりくねった音程の、呆れ声だった。
それに合わせて、表情も呆れたものへと変わる。
裕介は、ひるみそうになる自分自身を心で叱咤しつつ、彼女の呆れそのものに反論した。
「ほんとだよ、ウソじゃないんだ…! 友だちから聞いた話なんだけどそれだけじゃなくて、オレ…自分でもちゃんと調べてさ、それでわかったことなんだよ!」
「ヤバい薬物ってのはなんなのさ? あたしだけじゃなくてお前も飲んだのに、どこも悪くなってないじゃないか」
「それは、症状が軽いからそう思うだけなんだよ。でも軽いからこそ自分じゃわかんなくて、いつの間にか麻薬みたいに心と体を蝕まれて…」
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