氷の煙

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 ここで裕介は、自身が調査結果とはちがうことを口にしたと気づいた。記事で見た成分は、麻薬に含まれるものとは性質も名前も異なっている。  しかし、やめられなくなるという意味では『菜皇』も麻薬も同じだと、すぐに拡大解釈した。  今、修正したり言葉を止めたりして勢いを失えば、説得ができなくなる。彼はそれを大いに恐れた。 「…『菜皇』を飲み続けなきゃ、気がすまなくなるんだ! だからもう、飲むのはやめた方がいい!」  彼は、自身が言った言葉を修正することなく、最後まで言い切る。使命感と決意、そのすべてを声に乗せてトメにぶつけた。  しかし、彼女からはこんな言葉が返ってくる。 「バカバカしい」 「え…!」  思いの丈を一蹴された裕介は、小さくない衝撃を受ける。  そんな彼に、祖母は静かな口調でこう続けた。 「お前のことだ…心配していろいろ調べてくれたんだろうけど、それはどこ情報なんだい? あたしゃテレビでいつもニュース見てるけど、そんなの一度も聞いたことないよ」 「それは、ネットで」 「ああ、出た出た」  トメはここで再び、呆れ顔を見せた。  それに伴って、真剣だった声の響きも軽いものへと変化してしまう。 「あんたたち若者向けの文化なんだろうし、あたしも否定はしないよ。だけど、ネットに出てるからってそれが必ずしも正しいとは限らないだろう」     
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