おまじない。

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 ネットニュースを見て、私は深くため息をついた。ここ最近、嫌なニュースが続き過ぎてやしないだろうか、と。 ――コンビニにクレーンが突っ込んだって……うっわ、酷いな。高校生の男の子が、両足切断の大怪我って、可哀想……。  他の客やクレーンに乗っていた運転手は軽傷だったのに、たまたま雑誌を立ち読みしていた男の子だけが重傷を負ってしまったのだそうだ。両足切断――当然、二度と戻ることはないだろう。数日前にも、女子高生が降ってきた硝子の破片で両目を失明する大ケガをした、みたいなニュースを見かけたばかりである。  本当に大丈夫なんだろうか、今年は。ただでさえ大災害が多かったというのに、年の暮れになってこんなに悲惨な事故が連チャンするなんて、正直呪われているとしか思えない。 ――日頃の行いが悪いとかなんとか言う人もいるけどさ。事故だよ事故。そんなもん、行い次第で回避できるもんじゃないでしょうに。  カフェで一人、携帯を弄りながら思う。同じ高校に通う友達との待ち合わせ。ここカフェは駅に近いことと、若者向けのお洒落で安価なメニューが人気であることから高校生や大学生の客が少なくない。一人メシがあまり得意ではない私が、此処のケーキに限り一人でも食べに来るのだからつまりそういうことである。安くてお洒落でしかもお菓子が美味しいともなれば、若者に人気が出るのは当然だ。おまけに駅チカ。いいとこ取りとはよく言ったものだ。  尤も今日は――あまり楽しんで食事をすることは出来ないのかもしれなかったが。 「ごめん、奈都。遅くなっちゃった」  ん、と顔をあげれば――待ち合わせ相手の友人である鈴子が立っていた。中学時代からの付き合いで、中学高校と同じ吹奏楽部に通っている友人である。運動音痴の私とは違って、頭も良ければ運動神経も悪くないのが鈴子だ。何をやってもソツなくこなせるし、それでいて明るく茶目っ気のある性格でみんなの人気者である。  ついでに言えば見た目も可愛い。無駄ににょきにょき身長が伸びてしまった私とは違い、小柄ですっきりと綺麗に痩せている彼女。――実はひそかに告白されまくっている事を私は知っているのだ。好きな相手がいるからと、その告白を断りまくっていることも。
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