3)スマホが喋った!?

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大学の特性として、上級生になるにしたがって少人数制の講義が増えてくる。その中でも、二十人にも満たない学生を研究という名目で拘束するゼミと呼ばれる講義があり、怠惰な毎日を謳歌する私のような学生にとっては最も気が休まらない時間とも言えた。 昼食を終えたらそんなゼミが待っているわけだが、今回ばかりは他の講義と同じように無気力に過ごすわけにはいかなかった。私が他のゼミ生の前で発表をしなければならない回であったからだ。 大多数の中であればいくらでもやり過ごす術はあるのだが、少人数であるがゆえに私の嫌いな、”考えを持つ””準備をする””整然と話す”といった所業にも真摯に向き合わざるをえず、特にこれから控えている発表なんて皆の前に立つ以上恥をかきたくないため、用意周到に挑まなければいけない…… はずだった。 事件はいつも唐突に起こる。 ゼミ用の狭い教室に着くなり、今日の準備をしようとバッグを見たところ発表に使うために用意していた資料を忘れたことに気づいたのだ。 思わぬトラブルによって見切り発車の状態になってしまった私は、もはや焦りなどといった感情に停車する暇もなく絶望という終点に向けまっしぐらだった。
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