3)スマホが喋った!?

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言葉に詰まった間を保ったのはスマートフォンだった。 「私がサポートしましょう。資料データ記憶しておりますので表示致します」 私の胸ポケットのスマホから音声が流れ出るとともに画面が点灯する。慌てて取り出すと、スマホの画面には私が用意していたはずの資料のデータが表示されていた。 何が起こったのかは理解できなかったが、もうこれはチャンスとしてとらえるしか活路はない。藁にも縋る気持ちで私は、弱弱しく笑ってスマホの画面を掲げる。 「あっ……、そうです。今回、こちらデータの方で参考資料の方を用意させて頂きまして……、はは。あっでも、画面小さくて見えにくいですかね」 「はい。ゼミのグループとドライブに資料共有させて頂きます」 スマホはすかさずフォローをする。お前、なんて有能なやつなんだ。 これで資料忘れた分はカバーできた。これで後は通常通りを発表を行うだけだ、と胸をなでおろす。平静を取り戻した私は、まばらに聞こえる「悠那ちゃんのプレゼン、スマホ使うんだ」という称賛の声に会釈を返し、何事もなかったかのように発表を続ける。
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