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「あなたは、誰なの?」
「誰って、あなたのスマートフォンですよ」
分かりきったような口調で十分に分かりきっているようなことを返す。そんな生真面目な返答がなんか可笑しくて、思わず笑みの混じった息を漏らす。
「普通のスマートフォンなら、勝手に喋ったりしないんだよ」
「じゃあ、あなたのパートナーとでも言っておきましょうか」
パートナー、その言葉の響きが心地よかった。まるで、親しい誰かに認められたかのようで。
大きく瞬きをして、目をこすった。
私は現実を、スマートフォンを直視した。
真っ黒の画面。半年くらい使ってるからか少し汚れてしまっているパステルピンクのカバー。見れば見るほどただのスマホで、それがやたら今現実であることを突き付けているようだった。
「それなら、納得してみる。まだよく分からないところはあるけど」
もういちいち怪しんでいたら前に進めないことを薄々気づいてはいて、君を受け入れてみることにした。
「理解してくれたなら結構です。機種変更するまでの付き合いですが宜しくお願いします」
握りしめるスマホだけが気づけるくらいに小さく頷いた。
次のApple社の新作はいつ発売だろうか。勝手に喋ったりしないかな。しないよな、多分。
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